博士の就職とは何か?
── 学位の有無でも、ポスドクかどうかでもありません
博士号を取ったあと、
あるいはポスドクとして研究を続けながら、
企業への就職を考え始めると、
多くの人がこんな違和感を持ちます。
- 博士修了とポスドクでは扱いが違う気がする
- 自分は「新卒」なのか「転職」なのか分からない
- 企業は何を期待しているのか見えない
まず、最初に整理しておきたいことがあります。
博士修了者とポスドクは、企業から見た構造はほぼ同じです。
違って見えるのは「制度」であって、
評価の中身ではありません。
博士の就職は「学歴評価」ではありません
博士の就職というと、
- 学位があるかどうか
- 論文数が多いかどうか
- 有名な研究室かどうか
が評価されているように見えます。
しかし、企業側の関心はそこではありません。
企業が博士採用で本当に知りたいのは、これです。
「この人は、不確実で正解のない仕事を、自分で考えながら進められる人か?」
博士号も、ポスドク経験も、
それを推測するための材料にすぎません。
博士の就職は「即戦力採用」でもありません
よくある誤解があります。
博士は即戦力として期待されている
これは、半分だけ正しく、半分は誤りです。
企業は博士に対して、
- 明日から全部できる
- 業界知識が完璧
とは思っていません。
一方で、
「指示がなければ動けない」「問題設定ができない」
とも思っていません。
博士の就職で期待されているのは、
“仕事を定義し、進め、途中で修正できる力”
です。
博士課程修了とポスドクは、同じ問いに答えている
博士課程を修了した人。
ポスドクとして研究を続けている人。
経歴は違いますが、
企業側が見ている問いは同じです。
「この人は、自分で設定したテーマに対して、制約の中で成果を出してきたか?」
- テーマの規模
- 成果の派手さ
- 論文のインパクト
は二次的です。
重要なのは、
- どこまで自分で考えたか
- どこで行き詰まり
- どう修正したか
です。
博士の就職で見られている「エピソード」の正体
博士の就職でも、
面接では必ずエピソードを聞かれます。
しかし、ここで求められているのは
感動話でも、成功談でもありません。
博士就職におけるエピソードとは、
「研究という長期・高不確実な環境で、どう判断し、どう立て直してきたかの記録」
です。
- 失敗した話
- 仮説が外れた話
- 方向転換した話
これらは、マイナスではありません。
むしろ、
失敗をどう扱ったか
が、最も強い評価材料になります。
博士の就職で一番警戒されるのは何か
企業が博士採用で
最も警戒するのは、これです。
「この人は、自分の研究の外に出られるだろうか?」
これは、
- 研究が好きかどうか
- アカデミアに未練があるか
とは別の話です。
警戒されるのは、
- 文脈を切り替えられない
- 相手の前提を読まずに話す
- 評価軸が一つしかない
状態です。
博士修了でも、ポスドクでも、
ここが説明できないと就職は難しくなります。
博士の就職は「キャリアの敗者復活戦」ではありません
博士就職が、
「アカデミアに残れなかった人の次善策」
のように語られることがあります。
これは、構造的には間違いです。
博士の就職は、
研究という環境で鍛えられた思考と判断のスタイルを、別の環境に移す選択
です。
優劣ではなく、環境の切り替えです。
博士の就職は「翻訳」の問題です
博士の就職が難しく見える理由は、
能力不足ではありません。
「研究でやってきたことを、企業が理解できる言語に翻訳できていない」
これが、ほぼすべてです。
- テーマ → 課題設定
- 論文 → 成果物
- 議論 → 合意形成
- 研究計画 → プロジェクト設計
この翻訳ができた瞬間、
博士修了とポスドクの差は、ほぼ消えます。
博士GTPが目指すもの
博士GTPは、
- 博士を就職させる
- 博士を企業向けに作り変える
ためのものではありません。
博士として積み重ねてきた判断と経験を、企業が“扱える形”に再構成するための道具
です。
- 無理に盛らない
- 学位にすがらない
- 研究を否定しない
ただ、
「この人と仕事ができそうだ」と想像できる状態を作る
それだけを目指します。
最後に
博士の就職は、
博士課程修了か、ポスドクか、という
肩書きの勝負ではありません。
「長い不確実な時間を、どう使ってきた人か」
それを説明できるかどうか。
博士GTPは、
その説明を一緒に作るための場所です。
